蜂蜜養蜂|林 眞廣(はやし まさひろ)

  • 2017年3月29日
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ミツバチが作り出す花の蜜

きらきら輝くこがね色。とろとろのそれを、ほかほかのホットケーキにかけて。温かいミルクに溶かして。そのままスプーンでひと口。すると、ほんの一瞬で幸福な気分になる。はちみつ。

この素敵なたべものは、ミツバチというちいさな虫が花の蜜から作り出す。そのミツバチたちのお世話をする養蜂。「蜂を養う」。そもそも養蜂ってどんなものなんだろう? 野菜を育てたりするのとも、酪農とも、なにかが違う。養蜂についてもっと知りたい!

自然そのまま、花の種類で変わるはちみつの色

沢渡地区の養蜂家、林眞廣さんのもとへお話を聞きに行った。林さんは開口一番、「健康第一」と熱心に語り始めた。自然のものは体に良い、健康な体は健全な食生活から、という考えから無駄に手を加えない「そのまま」「ありのまま」、自然派のはちみつにこだわっているのだという。

林さんのはちみつ、ん? 瓶ごとに色がちがうぞ。明るい黄色から濃い茶色まで、幅広いグラデーション。どうして? これは百花蜜という、さまざまな種類の花から集められたはちみつ。どの花の蜜を採ってくるかはミツバチ任せだから、そのときどきで、こんなにいろいろな色のはちみつができるんだって。この色も、林さんは「そのまま」にしている。

そもそも花の種類によってここまで色が変わるなんて知らなかった! アカシヤのはちみつは淡い黄色、そして栗は、なんと、お醤油みたいに真っ黒だとか。思わず、「へぇえええええぇ~~!」

では、味はいかに? アカシヤ蜜と百花蜜をさっそく試食。アカシヤ蜜はクセが少なく、口当たり柔らかで食べやすい。百花蜜は濃厚、芳醇な花々の香りを堪能できる。目をつむると瞼の裏に、うららかな花畑が一面に見えるよう。

はちみつが出来るまで

はちみつってこんなにも個性豊かなんだ! それを生み出すミツバチたちはというと・・・?

ミツバチはコロニーと呼ばれる集団を形成し、養蜂用の人工の巣箱のなかで暮らす。コロニーのメンバーは、何万匹もの働き蜂と、たった1匹の女王蜂。すべてメスで、オスは繁殖時期にしか生まれない。みんな血の繋がった、ひとつの大家族。全員で力を合わせ、幼虫を育て、はちみつを貯蔵する。ちいさいけれど、とっても頑張り屋だ。

そんな女所帯のミツバチたちにとって、林さんは頼れるお父さんみたいな存在。蜜を集めるのに最適な場所へ巣箱を運んでくれる。とーっても重い巣箱をひとつひとつ担いで。ヨッコラショ。雨で花が落ちたら、次の花へ。エッコイショ。巣が熊に襲われたらすぐに助けに来てくれる。冬、花のない時期には砂糖水などの栄養をくれる。たくさんの娘たちのお世話はとっても大変。でも、そんな林さんの苦労に応えて、ミツバチは今年も、そして来年も、せっせと健気に蜜を集めてくる。

「ひと瓶のはちみつを集めるのに、いったいどれほどのミツバチの労働があるか…。」

林さんの言葉が、ズシリ。甘い魅惑のはちみつの裏にある、ミツバチと林さんたち養蜂家に感謝と尊敬の念も、じわり。

きっと今年の春は、家の庭にくるミツバチが愛おしく想えるのだろうな、などと考えながら。林さんから買った百花蜜を口に含むと、豊かな花畑が瞼の裏に広がった。