中屋饅頭店|福田 東一、昭子、公雄(ふくだ とういち、あきこ、きみお)

  • 2017年12月25日
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中之条町のグルメの1つ、きび大福

中之条町のグルメを語るうえで、ぜひともご紹介したい甘味があります。

沢渡温泉にある中屋饅頭店の「きび大福」。桃太郎のキビ団子が有名だけど、キビを食べたことがないという人も多いのでは? キビならではの食感と風味は、他では得られない独特な美味しさ。一度食べればファンになること間違いなしです。中屋饅頭店は昭和43年に開業。当初は温泉まんじゅうだけの販売でしたが、30年ほど前からきび大福を作り始めると、キビの珍しさもあってか評判はどんどん上がり、今では沢渡温泉の名物とよべる存在にまでなりました。

早朝から蒸される、鮮やかな明るい黄色のキビ

朝6時頃、大量のまっ白な湯気がモウモウと漏れ出す店の外。温泉地特有の「湯けむり」ならぬ・・・。朝のいつもの光景です。店内では、東一さんが大きな蒸籠でまさにキビを蒸かしている最中でした。こうしてキビともち米を蒸かすことから、店の一日が始まります。かたわらで昭子さんも右へ左へテキパキと準備。置かれたケースの中では、同じ大きさに丸められた餡子の玉が整列してキビ餅に包まれるのを待っていました。この粒餡子、嫌味のない上品な甘さが絶品。味は誰が? と尋ねると、昭子さんは東一さんの方へ手を向けました。

「味にはこだわっていろいろ工夫してるんですよ。」と東一さん。職人気質だけれどはにかみ屋の東一さんと柔和な笑顔の昭子さん。

そうしているうち、蒸かし終わり、白けむりの中からいよいよキビが登場。炊き立てホッカホカのキビは、目のなかに飛び込んでくるような鮮やかな明るい黄色でした。もち米と合わせて餅つきすると、まじりあい柔らかな色合いになります。キビともち米の割合は食感や風味がもっとも引き立つよう考えられています。保存料を入れずあえて賞味期限を短くしているのも、柔らかいうちに食べてほしいという思いから。職人の強いこだわりを感じさせます。

親子ならでは、三人の見事なコンビネーション

キビ餅で餡を包む工程は、息子の公雄さんも加わって親子三人で。一つのちいさな台を囲んで、お互い顔をつき合わせてします。朝のこのときは、家族がひとつところに集まる大切な時間。3人で作るようになって今年で22年目。東一さんと公雄さんが手早く餅で餡をくるめば、昭子さんがそれを箱に並べていき・・・。それぞれの動きがぴたりと合って、さすが。親子ならではの見事なコンビネーションです。

そしてなにより、東一さんと公雄さんの大福を作る手もとに私の目は釘付けになりました。手を濡らしてキビ餅の塊を持ち、別の手で餡子の玉をキビ餅にそっと押し込めるようにして、そのままキビ餅を絶妙な力加減で握りしめていくと・・・親指と人差し指の間から「にゅ~ん」ときび大福が出てくるのです。次から次から。できたばかりのまんまるの大福はそのまま粉が入ったバットの中へ落されます。それを見る私の頭の中には、

「にゅる~ん、ポンッ、にゅる~ん、ポンッ」と、なんとも愉快な擬音が賑やかに鳴り響いていました。ヒヨコのようなかわいい黄色といい、まあるい形状といい。もう卵にしか見えない! まるで手からきび大福が続々と産まれてくるかのよう。昭子さんによって箱に入れられ、お行儀よく並んだきび大福のなんと愛らしいこと。

沢渡温泉ときび大福

「沢渡温泉には、温泉ときび大福がある、と言ってもらえるように。」
跡を継ぐ公雄さんの頼もしい言葉です。

そうです、みなさん! 沢渡温泉には温泉だけじゃない、中屋饅頭店のきび大福があります。家族、親子二代の手から文字通り生まれ出るきび大福、ぜひ食べに来て!