糸のこ工房こびき|島村祐次(しまむらゆうじ)

いとのここうぼうこびき、しまむらゆうじ

糸のこ工房こびき|島村祐次

木工作家による木工体験教室

ユーモラスな形の動物たちがピースになった、木のパズル。十二支をモチーフにした組み木の置物には、“間に合わなかった猫”もちゃんと仲間入り。なかでも驚きの10連発のゴムでっぽう! 引き金に連動して回転する歯車にゴムを1本1本ひっかけて〝装填〟します。次々はじけるゴム弾は迫力満点。島村さんのつくる作品やおもちゃは、木ならではのやさしさと、遊び心、アイデアが詰まっています。

木工作家の島村祐次(しまむらゆうじ)さんは、中之条で木工体験教室を開いています。

場所は島村さんの自宅の一室で。ごく普通のタタミの部屋に座布団、大きなテーブルにみんなで向かい合っての制作です。網戸からはカーテンを揺らして風が優しく吹き込んでいます。なんだか懐かしい。おばあちゃんの家に遊びに来た感覚。夏休みの時期には、小学生が自由制作などで作りに来ることもあるといいます。この場所で、子どもたちが真剣なまなざしで工作に取り組むようす、見てみたいなぁ。

「今日は何を作りますか?」

見ると、たくさんの見本が置かれています。竹の昆虫たち(竹の小枝でできた脚の節々が超リアル!)、木面に自由に絵が描けるコースターや、キーホルダー、手鏡、ペンスタンド。絵は〝電気ペン〟という道具で、木面を焦がして線を引きます。うーん、、たくさんあって迷いますね。

あっ。あの10連発のゴムでっぽうも! これもつくれるんですね?
部品はすべて用意してあって、組み立て式。

精巧な竹の昆虫も、ボディと、小枝が太いの細いの2種類でできます。脚や触覚になる小枝は、ロウソクの火で熱して、くにっと曲げる。誰でもちゃんと完成品が作れるようにと、島村さんの工夫が凝らされています。

つくることを忘れた現代の子どもたち

でもその分、「失敗しても上手くいかなくても本人にさせる」というのが島村さんのスタイル。島村さんはすぐ近くで見守り、どうしても難しいところや最後の仕上げに、少しだけ手を貸してくれます。

「昔はおもちゃをいまのように簡単に買える時代じゃなかったですからね」周りの友達もみんな遊び道具を自分たちでつくっていた、という子ども時代を語ってくれました。「子どものころは、何度も小刀で手を怪我しながらつくり方を覚えたが、いまの子どもはナイフの使い方も知らないですからね。既成のものに慣れてしまって、自由に発想したり自分一人で作ることがなくなってしまった。いまの子どもは、昔と変わってきてしまいましたね。我々の頃とはね」

「自分で考えて、苦労して、ものを作り出すのが楽しい」という島村さんの、現代に生きる子どもたちへの想いが、そこにはあります。

笑顔で語る島村さん

“つくる楽しさ”を伝えたい

隣の部屋の片隅には、木のおもちゃがたくさん置かれていました。パズルや積み木や玉ころがし。木馬には不思議な足のようなものがついています。漕ぐと前に進むおもしろい仕組み。ゴムでっぽう用の的もあります。倒れた的を一気に立たせる便利な機能つき。これらはすべて、孫のためにつくった島村さん手作り。

島村さんはかつて、東京の研究所で木彫を学んだあと、県内の木工会社でおもちゃ作りをしてきた経歴を持っています。

売っているおもちゃを研究し、いくつもいくつも試作品を作りつつさらに改良を加え、完成に至ります。島村さんのつくるおもちゃは、こうしたたくさんの試行錯誤のうえに生み出されたものです。

「木で作るのは楽しい。でももう年だからね、あんまり多くお店に商品を卸して急かされるのも嫌だから。あくまで、楽しみの範囲で作っているんですよ」と笑う島村さん。
このとき制作中だったのは、県内小学校での木工体験のための部材づくり。去年にも学校に依頼され、およそ30人の生徒たちで体験教室をしました。

自分の手と想像力でつくる楽しみを、子どもたちにも。島村さんの活動は続きます。

島村さんの木工体験教室