ザ・ブルー・リボン|Jesse Fuller/Yayoi(ジェシー フラー/やよい)

  • 2024年3月3日
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ロサンゼルスに生まれ育ったジェシーさん。「子どもの頃、私も友達もみんなピザが好きで、私の家では金曜日に必ずピザを食べに行った。ティーンエイジャーの頃は、遊びに行くとすればゲームセンターやピザ屋。アメリカのピザ屋は、みんなが集まる場所」とピザ愛を熱く語る。
ザ・ブルー・リボンは2020年8月に中之条町つむじにオープンした、カリフォルニアピザが食べられるお店。トマトソースがベースとなるイタリアンピザと異なり、スパイシーなペパロニや地産野菜などが薄めの生地に乗り、素材の持ち味を生かした様々な味付けのピザが楽しめる。ジェシーさんとやよいさん夫婦は2人で力を合わせ、店の内装作りから始めた。

ジェシーさんが中之条町で暮らすのは、実は2回目。16年前はALT、アシスタント・ランゲージ・ティーチャーとして、中之条町内の中学校や小学校で英語を教えていた。
「アメリカの大学では、天文学がすごい好きで物理学を専攻していたけど数学が大変だった。日本のゲームが好きで受けていた日本語の専攻が楽しくて、こっちでいいと思った。日本で英語を教えるJETプログラムに志願し、たまたま来たのが中之条町でした」と話すジェシーさんは、町の子どもたちの元気さに驚いたという。大変だったけれど、いい思い出。
ジェシーさんと、渋川市赤城で生まれ育ったやよいさんとの出会いは、中之条町のスーパーの駐車場。やよいさんの友人が「一緒に遊びませんか?」とジェシーさんに声をかけた。数人でスポーツをして遊んだ。日本に来て数ヶ月、母国では盛大に賑わうハロウィンも、群馬の片田舎では何の盛り上がりもない。寂しく思っていたジェシーさんはやよいさんを映画に誘った。ファーストデートで2人が食べたのは、ペパロニピザ。その後2人の距離は近づいていき、結婚した。

ALTとしての任期が終わり、2人はアメリカへと渡る。英語も日本語もできて、昔からウェブに関心があったジェシーさんはゲーム会社に就職。その後もITの知識を生かし、ロサンゼルス近くにあった日本の自動車メーカーに勤めた。やよいさんは子育てをしながら専業主婦に。週に一回は、ジェシーさんがピザを作り、やよいさんが食べ感想を述べた。ジェシーさんのピザ焼きの腕はめきめき上達した。そうして、13年が過ぎた。

アメリカでの暮らしも長くなり、ある頃から2人は「もう少し日本に住みたかった」と思うようになる。昔、中之条町の2人の行きつけの飲み屋で「いつか中之条に戻って店をやる」と言っていた、そんな夢も思い出した。子どもも大きくなってきて、行くなら今しかないと思った。そして2人は再び、海を越える。新たな人生の場を探し他県へ行くことも考えたが、最後に選んだのは、慣れ親しんだ群馬県中之条町だった。
ジェシーさんが13年ぶりに中之条町役場に来ると、昔知っていた役場職員が「ジェシーがなぜここに?」というような、ぽかんとした顔で見つめている。移住の意思を伝えるとさっそく「移住・定住コーディネーター」の村上久美子さんを紹介された。昔中之条で働いていたこと、今、中之条町で2人の大切な食べ物であるピザの店を開きたいことなどを伝えた。村上さんは2人の熱意に応え、積極的に動いた。そうしてジェシーさんとやよいさん、2人の子どもたちは中之条町に移住、つむじのテナントに偶然空きがあったタイミングも重なり「ザ・ブルー・リボン」を開店するに至った。普段はやよいさんが中心となってピザ焼きや販売を行い、ジェシーさんはリモートで行えるIT関連の仕事をしながら、時折店に入ってピザを焼く。

店のおすすめは、六合産のまいたけを使ったピザ「六合トゥーンズ」。たまたま友人が持ってきた六合のまいたけをやよいさんがピザに使ったところ、その香りと歯ごたえがベストマッチしたのだそうだ。ジェシーさん曰く、やよいさんは食材の組み合わせを考える天才で、やよいさん自身は「もともと食べるのが好きだったのと、祖父母がお米や野菜を作っていたので、素材そのものを食べ比べる力はあるかもしれません」と話す。開店して間もないが、2人のピザ歴は長い。

ジェシーさんには、クラフトビールを作るという先の目標もある。つむじのテナントを出る時には、ダーツやジェンガで遊べるビール工場ができたらいいと語る。「私が子どもの時、ピザ屋はみんなが集まる場所だった。そういう場所を、中之条で作っていきたい」2人の夢は続いている。