ピザ焼体験|堀口 裕(ほりぐち ゆたか)

  • 2019年3月20日
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堀口さん家のすてきなお庭

ここの草や木々はみな、優しく無邪気。ひらりと舞い飛ぶチョウチョも、遊びに来た可愛らしい小鳥たちも。穏やかな風が頬を撫で、ウインドチャイムを心地よく響かせている。“よく来たね、待ってたよ”と、声にならない声にあたたかく迎えられているような気分になる。

伊参(いさま)地区にある堀口裕さんの自宅の庭。この場所は堀口さん手作りの遊び場だ。庭に生えている木を利用して作ったアスレチックや、枝からさがるブランコ。庭の一番高いところには、レンガを積んだドーム型の窯が、私たちを見下ろしている。そして、それらを囲む素朴な草花たち。

すっかり庭の雰囲気に胸をときめかせていると、堀口さんが笑顔で出迎えてくれた。ハーフパンツ姿にピカピカの笑顔。これから探検にでも出発する少年みたいに、わくわくが溢れている。

「はい」とおもむろに手渡されたビニール袋の中には、ふわふわの白い塊。両手で受け取ると、その感触に体の力がゆるゆる~とほどけてしまいそうに柔らかい!

「最初にこどもさんに渡しておくと、気持ちいいって言うの! このぷよぷよな肌触り、子どもどころか大人がやっても楽しいよね~」

さぁ、お手本を見せますよ~。と言いながら、堀口さんがさっきの“ふわふわ”をこね始めると、庭はあっという間にピザ工房になった。

自然で遊ぶ

「まず粉をふるいま~す」「次に、生地を広げていきま~す」
堀口さんは楽しそうに手元を動かす。それを真似しながら、私もこねこね…。こうしていると、まだこどもだった頃のあどけないどきどきがよみがえってくるみたい。毎日が色鮮やかに光って見えた、あの気持ち。

「大きく広げた方が具がいっぱい載るよ」
あのぅ、うまくできなくて不格好なんですが…。
「それもいいですよ。オリジナルの形で自分のがすぐにわかるでしょ。他の人に絶対食べられないよ(笑)」。“こうしなければいけない”なんてルールなんて無い。自由でいいんだ。そして、素直に楽しめばいいのだ。

これに好きな具を好きなだけ、山盛り載せて窯で焼く。すると、自分だけのピザの出来上がり。自然のなかで食べる自分だけの手づくりピザは、格別の味!

ピザの具はとってもユニーク。定番のミックスピザもあるけど、その時期の旬の食材を使ってつくる、“創作田舎ピザ”だ。この日はなんと、フキノトウ・ピザだった。味付けはくるみ味噌。懐かしくて素朴な味にほっこりする。夏野菜たっぷりのピザ。山菜の時期には、山野草の“変わり”ピザ。リンゴの時期には、まるごと焼リンゴ(贅沢!)も出来てしまう。身近に農家さんが何人もいて、新鮮な食材が豊富に手に入る。田舎ならではの特権だ。

青空の真下で、つくって、食べる。お腹が満たされた後は、休んでも良いし、すぐ近くを流れる沢で水遊びしたっていい。夏は昆虫採集、ホタル観賞。秋は落ち葉集めやどんぐり拾い。金色に輝く田園風景を眺めたら、きっと、心も安らぐ。

“こどもの頃に戻って”

堀口さんはこうして、自宅の庭を解放し、ピザ焼体験や田舎体験を通して自然遊びの楽しさを伝える活動を続けている。この庭には、まるで宝箱のように素敵な思い出がたくさんちりばめられている。時間を忘れるほど川で夢中になって遊ぶこどもや、年配の女性のお客さんがブランコに乗った瞬間、少女の顔に戻ったというエピソード。堀口さんがつくってあげた笹笛に目を輝かせてはしゃぐこどもたちの姿。

「私自身もこどもに帰って一緒に遊んでいます。まだまだやりたいことはいっぱいあるんです」と堀口さん。

若いころに都会暮らしを経験したという堀口さんだけど、こころの中には故郷の自然がずっと残っていた。「帰ってきて本当に癒された。ここは生まれ育った場所でもあるし、この地が大好き。“あったかい”というのかな」。以来、ずっとここに住み続け、3人の子どもを育て上げた。

そして、いまでは堀口さんのこの庭が、堀口さんのみならずたくさんの人の癒しとなっている。いつでもこども心に帰れる場所として。

田園風景のなかでピザ焼体験、田舎体験